自分の過ちは認めない [教育全般]



素直な子供に育てたい。
そう思われる方は多いと思います。
今日はそんな子供に育てるための方法を紹介させていただきます。
うちの子供は何でこんなに素直じゃないんだろう?
何で悪いことをしても、嘘をついてごまかしたり、同じ事を繰り返したりするんだろう?
そのように思われたことはありませんか?
実は、子供がそうなってしまう理由は簡単なんです。
親が子供に対して、素直に過ちを認めて頭を下げたことがないからです。
それだけのことです。

僕自身の体験談からお話しましょう。
僕のいた塾にRちゃんと言う中学3年生の女の子がいました。
反抗期特有のやんちゃな女の子で、塾内でも一番成績の悪いグループに入っていました。
中学校でも先生を困らせる常習犯としてマークされている子供でした。
通知表には、問題児の証明である「1」もついています。
昔で言えば、他の生徒を煽って学級崩壊をさせようとするようなタイプの子供ですね。
勉強をしないので成績は悪いのですが、頭が非常に良くて悪知恵が働きます。
先生の側からしてみれば、非常に難しい生徒です。
入会したてで、僕と話したことはあまりありません。

塾にはポイントカードというものがありました。
宿題をやってきたら1ポイント・・のようにしてポイントが貯まるカードです。
それが貯まると図書カードなどがもらえる仕組みになっています。
忘れたら押さないというのがルールになっていました。
前回の授業時にカードを忘れていたRちゃんが僕の前に来て一言。
「先生、前の授業のときにカード忘れてたし、その分のポイント押して!」
そこからはこんな感じで会話が進みます。
(僕)「いや、それは押せないな」
(Rちゃん)「何で?」
(僕)「この塾ではカードを忘れたら押さないというルールになってんねん。」
(Rちゃん)「そんなん知らんわ、それは先生の都合やろ?」
(僕)
「なんで押せないか教えてあげるね。Rちゃんが大人になっても忘れ物したりしたら困るやろ?今は確かに悔しい想いをしてるかもしれん。でも、先生はそういうことをこの経験から学んで欲しいだけやねん。他の生徒も同じように押してないし、今まで誰にも押したこともない。Rちゃんだけ特別扱いで押してあげるということはできひんな。」
決まりごとだからと言って押し付けるわけではなく、何でそういう風にしているのかまでしっかりと説明するのが、僕の教育方針でした。
あとは自分自身の信念として、ルールや規律は絶対に守るようにしていたので、ポイントを押さないというのは僕にとっては当たり前の回答だったのです。
少なくとも、このようにきちんと言って聞かせれば、ほとんどの子供はあきらめます。
僕がダメと言ったら、絶対にダメな事を知っているからです。
しかし、Rちゃんは引き下がりませんでした。
彼女は頭がいいのです。
ポイントを押してもらえないルールなんて、当然知っています。
知っていながら僕に突っかかってきているのです。
僕を困らせるために・・。
彼女には秘策がありました。
Rちゃんはこう言います。
(Rちゃん)「でも、先週S先生は押してくれるって約束してくれたで。」
(僕)「え!?そんな事言うはずないやん。その事は講師全員知っているよ。」
でも、S先生は新人でした。
もしかしたら間違えてそう伝えてしまったのかもしれません。
でも、僕は引くことは出来ません。
内心ではあせりつつ、それを否定したいという気持ちでRちゃんへの口調は少し厳しくなります。
(僕)「S先生がどうとか関係ないやろ!それが塾のルールになってるんやから絶対無理!」
彼女は引き下がりません。
このやり取りを授業が終わって家に帰ろうとしている子供達が遠巻きに眺めています。
僕としても引き下がれないところです。
(Rちゃん)「S先生に聞いてみてよ。」
僕は仕方なく、S先生に確認しに行きました。
S先生に聞くと、確かにそういう約束をしてしまったと言います。
研修でそのことは教えていましたが、上手く伝わっていなかったようです。
僕はRちゃんに言いました。
(僕)「S先生は忘れていたみたいやね。でも、とにかくそういう事になってるからポイント押すのは無理やで。」
ここまで来ると意地の張り合いです。
他の講師や生徒の手前、僕も絶対に譲りたくありません。
負けるのは嫌です。
Rちゃんはさらに言います。
「先生は塾で一番偉いんやろ?S先生がそれを知らんのは先生の責任やん。私は前の授業でポイントを押してもらえるって約束してもらったんやで。その約束はどうでもいいの?大人である先生が約束を守れなくていいわけ?」
かなりむかつきますよね(笑)。
でも、反抗期の女の子ってこんなものです。
慣れるとかわいいのですが、塾長は大変なのです。
講師の先生に「いい人」を演じてもらうためには、時には嫌われ役も演じなければなりません。
頭に来ますが、残念なことに正しいのは彼女です。
正論ってやつです。
僕がどうしたか・・。
しばらくの沈黙の後、素直に謝りました。
はっきり言ってかなり悔しいです(笑)。
(僕)「その通りかもしれんな。確かに先生が悪かった。ごめん。でも塾のルールはそういうことになっているから、次からは気をつけるんやで。S先生にはもう一度しっかり教えておく。」
Rちゃんは言います。
「やっと分かった?私が正しいやろ?じゃ、これにはんこ押して」
(僕)「はいはい・・」

反抗期になると、子供と口論になることは良くあります。
ほとんどは子供が間違っているのですが、稀に子供の方が正しいときもあります。
それは50回に1回くらいかもしれません。
でも、そういうことは確かにあるのです。
ここで大人の対応が試されていると思ってください。
状況は違えど、同じような出来事がきっとご家庭でも起こっているはずです。
そのほとんどは子供が間違っていることでしょう。
たしかに49回まではそうかもしれません。
しかし、たった1回だとしても、大人が素直に過ちを認められなければ、残りの49回全ての場面で子供は親と同じように反抗をします。
ほとんどの親は勘違いしています。
子供の要求をその通りに聞くと、子供は余計にわがままを言うのではないかと。
そんなことはありません。
反抗期の子供には、素直に親があやまる場面も見せなければならないのです。
急に仕事が入って守れなかった約束などはありませんか?
それを「お○さんは仕事なんだから仕方ない!」と理屈をつけて押し付けていませんか?
こういうことが重なると、何もいう事を聞かない、約束を守らない、反抗ばっかりする。
そして、「ごめんなさい」が言えない。
こんな子供に育ちます。

さて、Rちゃんはその後どうなったのか?
学校の先生の言う事も聞かない。
親の言う事も聞かない。
困った子供でしたが、不思議なことに僕の言う事だけはきちんと聞くようになりました。
面談で母親が、僕にこう尋ねてきたくらいです。
「この子が○○先生(僕の事)は、すごいっていつも言うんですよ。そんな事は今まで一度もなかったのですが、何かされましたか?」
「特に何もしていません。」
Rちゃんとお母さんの前で僕はそう答えました。
実はRちゃん自身、その事がきっかけでそうなったことには気付いていないでしょう。

本当の理由は僕だけが知っていたのです。



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