中学受験② [学校の選び方]



小学校5、6年で中学校受験を思い立つときってどんなときでしょう?

二つのパターンに分かれます。
まずは親から言い出した場合。
突然、中学受験を子供に勧める親の気持ちには共通点があります。
公立中学校に対しての不信感です。
地元の中学に行って悪い友達と付き合うことになるのではないか?
学級崩壊しているという噂があるが、そんな中学校に進学させて大丈夫なのか?
などなど・・
根も葉もない噂に振り回されている可愛そうな保護者もいますが、当たらずとも遠からずといった中学もあるので難しいところです。
親から受験させたいというときは多くの場合、このようにネガティブな感情が出発点となります。
逆に、子供から受験の話が出た場合。
これはポジティブな感情が出発点になっていることが多いです。
この場合はそのやる気を上手に導いてあげたいところですが、注意点があります。
どんなに賢い子供でも、学校の勉強だけでは、難関中学には入れないことを知ってください。
過去に私の塾に来ていたU君の例です。
彼は勉強好きで学校の成績もすべて「優」。
塾内でも非受験の生徒では、常にダントツトップの成績を取っていた非常に優秀な生徒です。
6年生になった春。彼は自信満々で中学受験にチャレンジすると言い出しました。
どうやら仲のいい友達が私立の難関中学を受験するようなのです。
こうした話は珍しくありません。
学校では似たレベルの生徒同士が友達になりやすいので、6年になってふたを開けてみると、実は親友は私立中学志望だったということになるのです。
お母さん方も周りに遠慮して、塾に通っていることをギリギリまで黙っていたりするんですね。
U君もまさにこのパターンでした。
彼はいつも一緒にいる友達とはライバルです。
学校のテストではいつも100点。一見同じくらいの成績に思えます。
それから面談を重ねて、夏期講習前の6月に彼が志望校として最終的に提示しきたのは、地域でも最難関のR中学校でした。
彼は努力家だったので、かなり頑張りました。
それでも、半年と少しくらいの勉強で難関中学に合格するのには無理があります。
偏差値はもちろん届いていませんが、志望校の変更も頑として受け付けません。
不安を抱えながらも、願書を提出し、受験することになりました。
結果は不合格・・。
当然と言えば、当然の結果です。
ここまでは普通のお話かもしれません。
しかし、U君にとって本当につらかったのはその後の毎日です。
彼はその後登校拒否になりました。
中学に入学してからも塾にだけは来ていたのですが、塾もいつしか無断欠席をするようになり、休塾扱いに。
お母さんはそれが原因でうつ病になってしまうなど、悲惨な結末をたどることになるのです。
僕自身、塾長としての経験が浅いときに担当した生徒なので、もっと出来ることがあったのではないかと当時はかなり反省しました。
不登校になってからのご家庭とは毎週のように電話をしていましたが、残念ながら、彼を立ち直らせてあげることは出来ませんでした。
その後、U君がどうなったのかは今の僕には分かりません。
この経験は僕にとってのトラウマです。
そして、こう思ったものです。
容易に中学受験を勧めるべきではないと・・。
僕が考えるに彼がそうなってしまったのにはいくつかの要因が重なっています。
一番大きかったのは、父親が単身赴任で不在であったことです。
高校受験はいざ知らず、中学受験は父親の支えが非常に重要です。
父親の協力なくして成功なしと思ってください。
母親は献身的に子供を支えますが、女性の特質として感情的になりやすいのです。
中学受験で子供以上に、不安定な精神状態になっている母親は少なくありません。
それを支える役割の父親がいないと、中学受験は厳しい戦いとなります。
他の要因としては、同レベルだと錯覚していた友人の存在です。
学校では同じレベルでも、中学受験というフィールドに立ったときには、はるか遠く及ばないほど先に行っていることを彼は知りました。
中学生くらいであれば、そんな彼を友達はフォローしてくれたかもしれません。
でも、小学生にそこまで気を回せという方が難しいです。
そもそも、自分自身のことで頭は精一杯なのですから・・。

あの時の僕に出来た最善の選択は、曖昧な期待を持たせないことだったと考えています。
家庭環境や友人関係から、難関校受験の是非を総合的に判断するという視点も欠けていました。
それからは中学受験には非常に慎重になりました。

次回に続きます。

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