大人が変われば・・ [勉強の習慣]


「心が変われば、行動が変わる
行動が変われば、習慣が変わる
習慣が変われば、人格が変わる
人格が変われば、運命が変わる」

冒頭の言葉は松井秀喜選手を育てた星稜高校の山下監督の名言として知られています。
松井選手はこの言葉について、
「今も心の中で輝いている宝石のような言葉です」と語っていました。
しかし、この言葉は山下監督が一から考えたものではないと思います。
なぜなら、同じような言葉を100年以上前のアメリカの学者が残しているからです。
名前はウィリアム・ジェームス。
アメリカ史上初の心理学者と言われています。
彼の残した言葉は山下監督のそれとほとんど変わりません。
唯一、心の部分が「思考」に変わるだけです。
今日はそのことについて書いてみたいと思います。

消極的な子供の姿にがっかりしてしまうこともあるかもしれません。
そういう子供にやる気を持ってもらうためにはどのようにすればよいのでしょうか?

いつも書いていますが、「勉強しなさい」は禁句です。
他にも、「もっと前向きに」、「もっと積極的に」、「もっと元気良く」といった言葉で子供を動かそうとしても、あまり効果がありません。(※状況によっては効き目があります)
日常的な場面では、使うべきではない言葉と言えるでしょう。
なぜなのでしょうか?
答えは、相手の「行動」を見て改善を求めているからです。
「行動」に働きかけても、相手は動きません。
「行動」が生まれる背景を知り、そこにアプローチするべきなのです。
「行動」が生まれる背景は以下のようになります。

思考→感情→行動→成果

多くの親は「行動」に注力して子供を変えようとします。
子供に限りませんが、相手の「行動」を変えさせるのは容易ではありません。
その証拠に、「勉強しよう!」と決意したところで、自分自身の「行動」すら変えることは容易でないはずです。
「行動」にいたった背景を、さかのぼって考える必要があるのです。
「感情」に働きかけることは、「行動」に働きかけるよりも有効です。
「感情」が高まると、人は動きますからね。
しかし、「感情」には波があります。
一時的にやる気になったとしても、その状態を持続することは難しいでしょう。
継続的にやる気を持ち続けてもらうためには、「思考」に働きかけるしかないのです。
では、どのようにすればよいのでしょうか?
まず知っていただきたい事実があります。
人間の脳は一日に5万回もしていると言われています。
(※諸説ありますが、膨大な数の思考が行われているという点では一致しています)
ただ、私たちが自覚するのは、そのうちの10%に過ぎないんですね。
つまり、90%は「無意識の思考」となるわけです。
「無意識の思考」には、特徴があります。
親や先生、友人や組織のリーダー(本人にとって影響力のある人)の「無意識の思考」は伝染してしまうのです。
つまり、子供にやる気がない場合、周囲の人間に問題がある可能性が高いわけです。
「無意識の思考」の背景には、本能や生まれ育った環境、成功体験や失敗体験など様々なものがありますが、通常、人間の思考はネガティブな方に振れやすいといわれています。
もう一度、まとめますね。

思考→感情→行動→成果

なわけです。
継続的な成果を期待するには、相手の「思考」に働きかける必要があります。
ただ、「思考」は見えないものなので、言葉で変えることは出来ません。
しかし、「思考」は伝染するという特徴があります。
子供の「思考」を変えるためには、働きかけを行なう本人(親や教師)の「思考」から変えなければならないということです。
「思考」は前述の通り、無意識下で90%も行なわれているので、普通に生活をしているだけでは変えることが出来ません。
まずは、無意識下で行なわれている思考のコントロールからはじめないといけませんが、どうすれば良いのでしょう?
そのためのコツは、思考の特性を理解することから始まります。
人の思考には下の3つの特性があります。

①思考には癖がある
②思考には枠がある
③ないない思考

まず、①から説明させていただきます。
無意識下の思考とは言え、思考には癖がありますので、その癖を知ることが出来れば比較的簡単に思考パターンを変えることが出来ます。
その癖がどのようにして現れるかというと、反射的に出る「口癖」です。
「難しい」、「疲れた」、「無理」、「忙しい」、「つらい」・・・
こうした言葉は全てネガティブな「思考の癖」の産物です。

ネガティブな思考⇔ネガティブな口癖→ネガティブなイメージ→消極的

このようになってしまうので、気をつけなければなりません。
これを改善する方法は、ネガティブな口癖をやめることです。
普段の生活にこうした言葉が隠れていないか、もう一度振り返ってみてください。

次に②の「思考の枠」です。
これも厄介ですね。
固定観念と呼ばれるもので、誰にでもあります。
人は「私はこれが正しい」と無意識に思い込んでいる世界があります。
それは、これまでの経験から知らない間に出来上がっているのですが、これが人間の成長を阻害します。
一例を挙げれば、オリンピックでは新記録が出ると、それを超える記録が次々と出たりします。
「このくらいが限界だ」と勝手に思い込んでいたラインを誰かが超えることで、選手の「思考の枠」が外れるんですね。
子供にとっては、この「思考の枠」が成長を阻害する要因になっていることがあります。
「思考の枠」による典型的な反応のひとつは「言い訳」ですね。
「いや」、「でも」、「だって」、「しかし」・・・
こうした言葉で自分を正当化することの多い子供は要注意です。
「思考の枠」をコントロールするヒントは、言い訳をしないことです。
自分自身もそうですし、家庭の決まりごとにしてしまうと良いと思います。
言い訳をしないということは、自分の否を認めるということです。
そうすることで、自分自身の「思考の枠」を強制的に広げさせるようにします。

最後に③の「ないない思考」です。
人間は無意識にないものにばかり意識を向けてしまうということです。
そうした思考パターンがあるからこそ、人類は進化を遂げたとも言えるのですが、教育という側面から見ると、この思考パターンの強い人は教師には不向きです。
「ないない思考」による動機付けは無意味ではありません。
それは例えば、こういう指導です。
「あと50点取らないと志望校に合格出来ないよ」
「こんな点数でどうするの!?」
「勉強しないと、大人になってから困るよ」
「いい大学に行かないとしんどいよ」
こうした指導はたしかに短期的には成果を出すんです。
子供の危機感に訴えるからなんですね。
でも、長期的には疲弊してしまう指導法であることを知ってください。
このやり方を一年間続けることは出来ません。
では、長期的にやる気を持続させることの出来る指導とはどのようなものでしょうか?
それは、子供の「わくわく感」に訴える方法です。

「あと50点取らないと志望校に合格出来ないよ」
ではなくて、
「あと50点取ったらあの学校の制服を着れるね」
「こんな点数でどうするの?」
ではなくて、
「次のテストでいい点数を取ったらみんなきっと驚くね」

こんな風に動機付けをしていくようにします。
危機感に訴えるような指導はいりません。
(そう思っていて、ちょうど良いくらいのバランスになります)

まずは、自分自身の思考の特性を理解した上で、子供の行動に問題がないかを振り返ってみてください。
一見遠回りに見えますが、これが一番の近道です。

冒頭の格言風に言えば、
「大人の思考が変われば、子供の思考が変わる、
子供の思考が変われば、子供の行動が変わる
子供の行動が変われば、子供の習慣が変わる
子供の習慣が変われば、子供の人格が変わる
子供の人格が変われば、子供の運命が変わる」
となるわけですね。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。