過去の記事 [復習]


今日は過去の記事で最も反応が高かった記事の復習です。
「傾聴のスキル」についてです。
コミュニケーションに悩むお父様、お母様。
初めて読まれる方は必見です。

子供の理解を得られる究極のコミュニケーション法についてお話します。
現時点で考えられる最高のコミュニケーションスキルです。
スキルなので、技術です。
技術は愛情という土台がなければ、真の効果を発揮出来ませんが、
このようなブログを読んでいただくくらいなので、それは大丈夫だと思います。
僕はこの技術を身につけて人生が変わったと言っても過言ではありません。
対人関係において絶大な効力を発揮します。

分かりやすいように、ケーススタディで説明したいと思います。
今回のケースは大げさに思われるかもしれませんが、実際に良くあるお話です。

★中学3年生の夏、突然子供がこのように言い出したらどうしますか?

「僕は高校に進学しないで働くことにした」
(あなたはもちろん子供には高校に進学してもらいたいと考えています)

これに対しての回答を列挙してみましょう

Aさん 「何を言っているんだ!」(怒り出す)
Bさん 「その理由を話してごらん?」(質問する)
Cさん 「それはいい考えだ!」(同意する)
Dさん 「学校の勉強は無駄だと考えたんだね、でもそれは・・」(解釈する)

さて、正解はどの親の返事でしょうか?

心の中で正解を考えてみてください。
では正解を見ていきましょう。
まずはAさん・・これは問題外ですね。
子供は自分なりに悩んだ結果、親であるあなたに大切な相談をしているのです。
たとえそれが間違った答えであれ、否定してはいけません。
子供はあなたへ相談をする気を失くすでしょう。
確実に親と子の距離が開くと考えてください。最もダメな反応です。
「いや、そんな反応をするはずがない!」
結構皆さんそのようにおっしゃられますが、本当にそうでしょうか?
子供の成績が返却されたときなど感情的に怒っていませんか?
「叱るときは理性的に、ほめるときは感情的に」
これは教育の基本です。怒りたいときほどぐっとこらえてください。
次はBさんの反応ですが、一見いい解答のように思えますよね?
でも×です。今の子供の考えでは高校に行かないことが正解なのです。
その理由を話したところで、それを正当化するための言葉しか出てきません。
そしてその言葉によって、さらに自分自身の想いを強めてしまう結果になるでしょう。
なぜそう思ったのかは後で聞けば良いのです。
次にCさん。これも不正解の反応です。子供の意見に安易に迎合するのは良くありません。
理由も話していないのに、そんなことを言われるとかえってあなたへの信頼を失う要因になります。今後、大切な人生の相談をしようとは思わないでしょう。
最後はDさん。これが正解?
実はこれも×です。残念ながらここに正解はないのです。
Dさんのケースは子供に対しての愛情が深く、頭のいい大人が選びがちな反応です。
でもそれは・・の後にどんな言葉が続くのかといえば、高校に行かないデメリットについての客観的な意見か、自分自身の自叙伝に沿った苦労話です。
例えば、こんな具合に・・
「お父さんも中学校3年生のときに同じことを思ったよ。一時は学校の勉強もすべて止めてしまってねぇ・・でも中学3年生の夏に気付いたんだ。とりあえず行ってみるだけでも悪くないんじゃないかって。入ってから辞めることも出来るわけだし・・・(延々と続く)」
残念ながら、子供はこのような話を求めていません。
いえ、正確には今の段階では求めていないのです。
そういった経験談をお子様に話して聞かせてあげることは非常に重要ですが、子供が何かの相談をしているときにするべきお話ではないのです。

すべて不正解・・。
では、どのように答えてあげるのが、ベストなのでしょうか?

私ならほぼ100%の確率でお互いに望む結論を出せると思います。
別に偉そうにするつもりはありません。
そういう技術を学んで実践してきたからです。
誰にでも出来ることだと思っています。

さて、先の質問に対しての回答をしたいと思います。
あえて最善の答えを述べるなら、
「あと半年で学校生活を終えて、社会に出る・・相当思い悩んでいるのかい?」
となります。
これって、Bの答えに似ていますよね?
「その理由を話してごらん?」と一体何が違うのでしょうか?
実は、どこに話の焦点を当てているのかが違います。
Bの回答はあくまでも「なぜ高校に進学をしないのか?」についての質問です。
しかし、先の回答はそうではありません。
子供の感情面に対しての質問になっているのが重要なポイントなのです。
高校に行きたいかどうかではなく、子供が今、何を感じているのかを理解しようとするための質問なのですね。

それでは、なぜこのような返答が最適なのかを見ていきます。
人間関係の原則として、
「自分を理解していない人間を理解しようとはしない」
と言えます。
これは親子のような間柄においても例外ではありません。
いえ、むしろ親子だからこそ、より顕著にこの傾向が現れると言えます。
子供が突拍子もないことを言い出すのには理由があります。
まずあなたに求められるべきことは彼や彼女の立場に、自分自身を置き換えて徹底的に理解するように努めることです。特に理解すべきは相手の論理ではなくて、感情です。
このようなことを突然言い出した場合、子供の感情は何かしら波立っています。
感情的になっている相手に、論理でいくら対抗しても火に油を注ぐようなものです。
子供からは自分の考えを正当化するための言葉しか引き出せません。
まずは感情的になっている相手を冷静にしなければなりません。
そこから論理的な話が始まるのです。
しかし、相手の感情を落ち着かせるのは簡単ではありません。
相手の感情を理解するための、話の聞き方として傾聴のスキルを説明します。
あくまでもスキルなので、これが全てだと思わないでください。
傾聴のスキルには4段階あります。
まずレベル1。これが最も簡単です。
それは「相手の言うことを繰り返す」です。
「高校に行きたくないと思っているんだね」
これでOK。
こうした話の聞き方が出来ていなかった方は、このように聞いてあげるだけでもお子様の反応は劇的に改善します。少し子供の心の中をのぞいてみましょう。

子供 「僕は高校に進学しないで働くことにした」
(またどうせ何か文句言われるんだろうな・・。でも絶対高校なんて行くものか!)
母  「高校に行きたくないと思っているんだね」
(えっ!?何で何も言わないの?)
子供 「そうなんだ・・勉強なんて意味がないって思ってさ」
(しっかりやった方がいいかもしれないけど、僕には僕なりの生き方がある!)
母  「勉強には意味がない・・」
(え、えっ!?それを認めてくれるの?じゃ、僕の本音を話してみようかな?)
子供 「実はさぁ・・昨日実力テストが返却されたんだけど、・・」

実際、ここまで簡単にいくかはわかりませんが、まぁこんなものです。
暖簾に腕押しのようなもので、イライラの矛先を見失ってしまうんですね。
これが傾聴の威力です。
相手が感情的な問いかけをしてきたときはまずそれを落ち着かせなければなりません。
そのためには相手の話を徹底的に聞く姿勢が求められるのです。

それでは次に傾聴のスキル、レベル2を説明します。
次の段階は「相手の言葉を自分の言葉に置き換える」です。
これだけでかなり聞き方が洗練されます。
上の例で示せば、こんな具合です。
「中学校で学生は止めて、もう社会に出たいんだね?」
「勉強は将来の役には立たない・・・」
このように相手の言葉を自分の言葉に置き換えて発信するのです。
彼の言葉を感情的に理解している上に、新しい気付きを与えることが出来ます。
オウム返しのように反応するよりも真摯な姿勢も伝わりやすいです。

レベル3になると、少し難しくなります。
この段階では、「相手の言葉の感情を反映」するのです。
つまり、
「相当思い悩んでいるんだね」
「珍しく落ち着きをなくしているみたいだね」
相手の言葉から心情を察して、その心情を反映します。
これは傾聴のスキルでも高等技術です。
なぜならあなた自身が子供の発言の中に含まれている感情的な側面を理解しなければならないからです。
もちろんこの発言に対して、あなたが感情的にならない冷静さも求められます。
あなたが感情的に心情を反映する言葉を投げかけるとしたらどうでしょうか?
「何をイライラしてるのっ!!?」
・・・最悪です。
あくまでもあなた自身が子供の発言に対して冷静でなければこのスキルは使えません。

そして最終段階。傾聴のレベル4です。
これは、「内容を自分の言葉で言い換えて、感情も反映する」です。
そうするとこれが正解に近い答えになるわけです。

「あと半年で学校生活を終えて、社会に出る・・相当思い悩んでいるのかい?」

次は、実際に傾聴のスキルを使って、子供の悩み相談に取り組んでみたいと思います。
親と子供の心の動きに注目してください。

■あなたには中学3年生のお子様がいます。夏休み前に突然高校進学しないと言い出しました。

☆子供
「僕は高校に進学しないで働くことにした」
(またどうせ何か文句言われるんだろうな・・。でも絶対高校なんて行くものか!)
★親 
「あと半年で学校生活を終えて、社会に出る・・相当思い悩んでいるのかい?」
(これは学校で何かあったな。相当イライラしているぞ。まずは話を聞こう)
☆子供
「勉強なんて意味がないと思うんだ」
(そっか、あと半年もすれば働かないといけないのか・・それは嫌かも)
★親 
「勉強には意味がない・・何かつらいのかい?」
(そう言えば、模試結果が返却される頃だな。それが悪かったのかもしれないな)
☆子供 
「実は、今日一ヶ月前の模試結果が返ってきてさ。僕に行ける高校はないって
塾の先生が言うんだ。もし行きたいんだったら、夏休みは毎日6時間は勉強しろって。今まで勉強したこともないのにそんなに出来る気がしないよ。」
(今日は本音で話しても大丈夫そうだな)
★親
「そんなに勉強出来る気がしないってわけだ」
(なるほど悩みは分かったぞ。高校に行きたくないわけではなさそうだ)
★親
「でも、実際はそこまで勉強しなくても入れる高校もあるんじゃないかな?」
☆子供 
「僕が行きたいのはそんなに簡単な高校じゃないんだ!バカな生徒と一緒に勉強
するくらいなら働いた方がましだよ!」
(お父さんは何としても高校に行かせるつもりだな!)
★親
「高い目標を持っているからこそ、今の成績が不安だったんだね」
(いけない、いけない。感情的になってきた。もう一度よく話を聞こう)
☆子供
「そうなんだ・・。僕の行きたい高校に行くためにはあと100点必要なんだって」
★親
 「今回は何点取れたの?」
☆子供
「五教科で300点。全然ダメだったよ」
★親 
「なんだ全然悪い成績じゃないじゃないか!」
(確かに前回よりも大幅に下がったな。でも思ったよりひどくもない)
☆子供
「悪いよ!だって山田君は420点も取ったんだよ!」
★親 
「お前より120点も良かったんだ。それは悔しいね」
(また感情的になってるな。今はまだ話を聞く場面だ)
☆子供
「そうなんだ。前のテスト結果は一緒だったんだよ。勉強だって同じくらいしかしていな
いはずなのに、納得がいかないんだ。僕は頭が悪いのかなぁ・・」
(そうか・・僕は山田君に負けたことが悔しかったのかもしれない)
★親 
「テストが取れなかったから頭が悪い。だから落ち込んでしまった。高校に行きたくない
 というよりは、高校に行ける自信を失くしてしまったのかな?」
(何に悩んでいるのかが見えてきたぞ。要するに次のテストで山田君に負けないくらいの点数を取りたいが、そのための勉強に自信がないんだな・・)
☆子供
「そうかもしれない・・。頑張ってやっても点数が上がる保証もないし」

・・・・・

きりがないのでここまでにします。
どうでしょうか?
ポイントを整理して説明しますね。
キーワードは子供の「感情」です。相手が感情的に発言をしているときに論理的な説明をしても相手は決してこちらの言葉を受け止めることは出来ません。

例えば、「悪いよ!だって山田君は420点も取ったんだよ!」という場面。
論理的な返答例とその返答に対する子供の心の中を見てみましょう。

親「山田君はきっと見えないところで努力をしていたんじゃないかな?」
子供(それは僕が努力をしていないってこと?こんなに頑張っているのに)
親「成績には波があるから、今回はたまたま山田君の成績が良かったんじゃないかな?」
子供(僕は、山田君は本当に頑張っていたから点数が取れたんだと思う)
親「受験まで時間はある。120点の差なんてすぐに埋まるよ」
子供(お父さんは勉強がどれだけ大変か分かっているのかな?)

要するに何を言っても無駄なのです。
この段階では話を聞くこと以外に正解はありません。
まずは傾聴のスキルを使って、子供を落ち着かせなければなりません。
徹底的に話を聞くと、子供の感情に変化が訪れます。
今度は、親の論理的なアドバイスを聞きたくなるのです。
どうすれば夏休みに成績を上げることが出来るのか?
他にはどんな進学先があるのか?
お父さんやお母さんは受験のときにどんな苦労をしたのか?
そうしたお話に耳を傾けてくれるのです。
そのお話をしている段階で感情的な反応が返ってきたら、もちろん傾聴に戻らなければなりません。
相手の様子を見ながらこちらの対応を変えるのです。

以前、僕は書きました。
どんな育て方をしても愛情があれば、長期的にあなたと子供の関係は必ず改善されると。
しかし、愛情だけで子供が自立できる保証はありません。
そこにはやはり「育て方」のテクニックがあるのです。
この例で論理的な反応ばかりをこの親が示したと仮定します。
そのとき、子供には高校進学するだけの学力があり、本人も心の底ではそれを望んでいるにも関わらず、高校に行かないという選択を子供がしてしまう可能性が生まれます。
自分の立場を正当化するために、あえて間違った選択肢を選んでしまうんですね。
特に強い自分の意志を持っていて、将来が楽しみな子供にこの傾向が強いです。
これが教育の恐ろしさなんです。
高校進学がすべてではないですし、それ以外の選択肢でももちろん良いのですが、今回の子供の例で言えば、彼が高校進学しないのは正しい選択とは思えません。なぜなら彼自身の本音は高校に行きたいからです。
それを察して上手く導いてあげるのが親の大切な役割でしょう。


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