全体像が見える人になるための3つの習慣 [論理的思考能力]


今回も続編をやります。
これまで何度も説明を試みてきましたが、そのくらい重要だと私が考えていることなので。
本日の内容はかなり長いですが、仕事面でお役に立てる内容かと思われます。
これは私のロジカルシンキングセミナーの内容の一部を無理矢理文章にしたものです。
文章化しているのでわかりにくくなっていますが、論理構成は同じです。

皆さんは「鵜の目鷹の目」という言葉を聞いたことがありますか?
大辞泉で意味を調べると、「鵜や鷹が獲物を求めるように熱心にものを探し出そうとするさま。またその目つき。」とあります。
それはそれで良いのですが、私はこの言葉にはもう一つ意味があるように思えてなりません。
なぜなら、鵜と鷹の視点には決定的な違いがあるからです。
鵜は鳥類にも関わらず、飛びながら獲物を探しているわけではないんですね。
眼前の獲物を凝視しているイメージです。
鷹は違いますね。
広い視野を持って周囲を見渡し、チャンスがあれば一瞬で狩りを行います。
昔の人はこの二者(鳥?)の「獲物を熱心に探す」という共通点のみならず、この対照的な部分にも注目してこの言葉を使ったのではないかと思うわけです。
つまり、全体を俯瞰して見る能力を「鷹の目」、細かい現象を見落とさない注意力を「鵜の目」と表現されているような気がしてなりません。
これまで散々出てきた図を別の角度から表現したのが以下の図です。

鵜と鷹の図.jpg

鵜も鷹もいますね。
高いレベルの思考には、このどちらの視点も必要なんです。
ということで、本日のブログでは「鵜の目鷹の目」の意味を以下のように拡大解釈して使用させていただくことにしました。
「鵜の目鷹の目」とは、
「鵜のように細かい点を見落とさない注意力、鷹のように全体を見渡せる視野を併せ持ち、両方の視点で熱心にものを探し出そうとするさま。」
書いてみて思いましたが、少し面倒で言いにくいので省略されたのかもしれないですね・・・。

さて、今日は教育とは少し内容が離れます。
前述の教育リテラシー版「鵜の目鷹の目」がビジネスでどのように使われるかです。
例えば、こんな言葉があります。
「木を見て森を見ず」
この場合、鵜の視点しか持たない人はまさに森を見ないことになります。
鷹の視点を持つということは森を見よということと同義ですね。
しかし、それがなかなか難しいのです。
鷹の視点を持つことが出来れば、先程の図のように全体を俯瞰してみることが出来ます。
全体の構図を再度確認すると、図の縦方向は論理によってつながっており、横方向は構成要素に分けられています。
縦の論理の流れを示す図を「フローチャート」。
漏れなくダブりなく(MECE)、構成要素を横に並べたものを「フレームワーク」と言います。
ビジネスにおいて、この二つは必須のツールとして位置づけられています。
この全体像に基づいて話をするとわかりやすい。
問題解決もしやすい。
要領も良くなる。
ということで、こうした全体像が見えるようになることが重要なのは共感していただけると思うのですが、これは出来る人は無意識的に行っていることであり、それを出来ない人が意識的に行うのは結構大変なことです。
そこで、今日は自然とこの「鷹の目」が身につく習慣を紹介させていただきたいと思いました。

その前に、前提条件があります。
それは、論理をきちんとつなげて話を出来る能力があるということです。
過去に取り上げた「風が吹けば桶屋が儲かる」で説明させていただくと、→( )内は心の声

結論から言います(→はい、どうぞ)

風が吹くと桶屋が儲かります(→何で?)

順を追って説明させていただきます(→よろしくお願いします)

風が吹くと、砂埃が舞います(→ふんふん)

砂埃が舞うと、目に砂が入る人が増えます(→そうだよね)

目に砂が入る人が増えると、視覚障害者が増えます(→えっ?そうかな?この話何か変!)

こうならないようにしましょうということ。
論理的につながった話をする能力は、普通の大人であれば誰にでも備わっています。
程度のレベルに差があるだけです。
「●●だから、××」と言ったときに、どれだけ客観性を持てるかという点が重要なんですね。
独りよがりの意見で強引に「●●だから、××」とまとめてはいけない。
最も客観的な基準は数字ですから、数字で論理をつなげばほぼ間違いがないわけです。
これまで何度も述べてきたとおりです。
この点を注意すればいいだけなので論理的につながった話をするというのは、実はそれほど難しいことではありません。
レポートや論文を作成する際には、誰もがそれなりに気をつけているはずです。
しかし、全体視野を持って物事を理解しようとしている人はあまりお目にかかりません。
だからと言って、全体視野を持っている人があまり存在しないわけでもないのです。
この点、説明を補足しておきます。
実は大半の人は自分自身の得意分野において、この全体視野を自然と習得しています。
「ぱっと霧が晴れたように物事を理解する瞬間」とか、「急に仕事が早くなる」とか、「点と点が線でつながる」とか、「多面的に物事が見れる」とか、「何でもわかる(ような気がする)」とか、こういう言葉を言うとき、もしくは実感を持つときはありませんか?
このような表現はすべてこの全体視野を持てたときに出てきます。
本日のブログで言うところの「鷹の目」ですね。
普通は、一つの物事を一定期間継続した中で自然に見えてくるものなのですが、「鷹の目」の視点を意識的に持とうと心がけることで、人よりも早くこの全体像が見えるようになります。
何らかの分野において、この全体像がすべて見えている人がその分野を極めている人です。
いったん何かの分野で、全体像が見えてしまうとしめたものです。
なぜなら、この全体像は分野が異なっても構図は似ているからです。
いったん何らかの分野で高い業績を残した人が、他の分野においても高い業績を出す例はたくさんありますが、それはこの全体像が似ているからなんですね。
少し余談になりますが、この典型的な例が語学です。
英語学習で苦労された方は少なくないと思いますが、疑問に思ったことはありませんか?
英語一ヶ国語を習得するだけでも、あれだけ苦労をするのに、世の中にはなぜ何ヶ国語も話す人がいるのだろうかと。
欧米に行くと、5ヶ国語くらいを扱える人にはたまに出会います。
私自身の英語力がその域に達していないので何とも言えませんが、私が想像するに彼らには語学習得に必要なプロセスの全体像が見えているのではないかと思うのです。
母国語以外の最初の言語を習得するまでは私たちと同様に大変ですが、それに成功すると語学習得の全体像が見えるので、その視点を他の言語習得の際に活かしていくわけです。
・・・ここまでが何の説明かと言えば、「全体像が見えることの重要性」です。
しかし、私が本日言いたいのは「全体像を見ようとすることの重要性」です。
(違いはわかりますよね?)
見える日が来るのを待つのではなくて、積極的に見ようとしましょうということです。
前置きが長くなりましたが、そこでお勧めしたいのが、以下の習慣となります。
結論から言えば、以下の習慣をつけていただくことによって、この「鷹の目」が習得出来ます。
普段の会話の中に以下の3つの言葉を取り入れていただきたいのです。

①「結論から言います」
②「今日のお話のポイントは3点です」
③「例えば・・」

なぜ、それぞれの言葉を会話に取り入れることで全体視野が身につくのでしょう?
それについて詳しく説明を加えていきます。
(※長くなりますので、3つの項に分けて説明させていただきます)

■習慣① 「結論から言います」
まず、一点目の「結論から言います」という言葉。
実は、これは簡単そうに見えて結構難しく、そして奥の深い言葉です。
仕事における報告の場面を想像してください。
部下に何かを報告させる場合、上司は暗に以下の2つのうちどちらかの期待を持っています。

●上司の期待
A:具体的なこと(現場の細かい状況、問題の解決策など)を教えて?
B:状況をわかりやすく報告して?

「報告して」という言葉には上の2つのどちらかの意図があるのです。
(※組み合わせたパターンは排除しています)
相手が何を期待しているのかを予想して報告をしなければなりません。
ビジネスの場合、それもなるべく早く簡潔に行うことが大切です。
ここで上司の期待がAだったとしましょう。
その場合の結論は「現象」面となります。
現象面を結論に持ってきて、話を展開すると上司は非常に聞きやすいです。
くどいようですが、「本質」の反対語は「現象」ですね。
この場合、上司の中にはおぼろげながらも全体像はあり、「本質」もある程度つかんでいます。
現場で見えた新しい変化や気付きを知りたいわけです。
ちょっとわかりにくいと思いますので、私自身の体験談で説明させていただきます。
例えば以下のようなケースがAに当たります。

●状況
古株の生徒F君の数学の授業について、R先生からの授業報告
私→F君のことについてだいたいの状況は把握している
知りたいこと→来週の中間テストで点数を取らせるための具体的な案や新しい変化

●R先生からの報告
○ 良い例 ・・・100点の報告
「結論から言えば、来週のテストで点数を取るために必要なのは復習問題の解きなおしです。ですからそれを宿題に出しました。来週の授業はその確認から進めていくべきだと思います。」
「それはなぜ?」(私)
「数学で点数を取るために必要な要素を計算力と応用力にわけた場合、彼の計算力は非常に高く問題はないように思います。なぜなら・・・(中略)・・・。応用力については少し問題があるようでしたので、テストで出題されそうな応用問題をいくつか選んで解かせてみました。今日の授業ではきちんと解けていましたので、後は似たような問題を何回か解きなおしすれば大丈夫です。ワークブックのP73~P75に復習問題がありますので、それを宿題に出しました。」
「OK。報告ありがとう。」(私)

× 悪い例1 ・・・50点の報告
「応用問題をさせてみたところ、問題2と問題3でかなりの時間がかかってしまいました。」
「で、結局正解できたの?」(私)
「いいえ、彼には少し難しいと思いましたので、もう少し簡単な問題をやらせてみました。」
「どうなった?」(私)
「だいたい解けました。」
「どうしたらいいと思う?」(私)
「今日やった復習問題の解きなおしをさせると良いと思います。」
「彼の計算力はどうだった?」(私)
「計算力については問題がないように思いました。」

× 悪い例2 ・・・0点の報告
「このままでは彼の来週のテストの点数はやばいです。」
「何がどうやばいのかもう少し具体的に教えて。」(私)
「応用問題が解けません。」
「解けるようにするためにはどうすればいいと思う?」(私)
「何回も解くこと・・・ですかね?」

良い例の報告では先に結論を持ってきています。
結論は「復習問題の解きなおしをさせるべき」という点で、これは「現象」面と言えます。
「本質」的なことではなく、具体的な事実ですから。
結論である「現象」面を速やかに報告した後、その理由を説明するために、「数学力」という「本質」部分から報告をしています。
「本質」は概ね理解しているが、「現象」が見えていない私にとって、的確な報告と言えるでしょう。
最初に結論を提示した後の説明のアプローチは、「本質」から「現象」にいたる演繹法です。
今度は悪い例に注目してください。
1よりも2の方が重症度は高いですが、両方意外によくあるようなお話です。
まず悪い例の1。
これは報告をさせる際に最も起こりがちな症状です。
特に女性に多い。
目の前に起きた「現象」を次から次へと説明してくれるのです。
他愛のないおしゃべりなら良いですが、時間の限られた仕事の報告でこれはまずい。
授業時間中に起きた「現象」すべてを聞く時間はこちらにはもちろんありません。
目的達成のためには何が必要で、授業時間に集めた「現象」をもとにF君には何が足りていないのかを推測し、その具体的な解決策を報告する。
難しいですが、これこそこちら側が期待していることです。
そのため、こちらの期待に沿った報告が出来るようになるためには、数学の成績アップの方法論についての全体像が見えている必要があります。
ただ、経験が浅い講師にはこの全体像は見えません。
ですので、すでにフレームワークを持っている私が質問を加え、状況を把握するわけです。
例えば、私は「彼の計算力はどうだった?」と聞いていますが、これがフレームワークです。
フレームワークを別の表現で言えば、チェックリスト。
この例では、数学力を計算力と応用力という二つに切り分けて考えています。
R先生の報告では、応用力の部分しか見えなかったから、計算力について質問したわけです。
50点の報告ですね。
悪い例の2。
こちらはずいぶんひどいですが、男性によく見られます。
細かい点への注意力が足りず「現象」を見落としているため、具体的なことを何も言えない報告。
「鵜の目」の欠如です。
ただ何となく漠然と「良くない」という雰囲気だけをつかんで、それを報告してくれたわけです。
いつもの図で言えば、「本質」部分のみを曖昧なかたちで理解しているとこうした報告になります。
良く言えば要領の良い人に多い傾向で、悪く言えばいい加減な人に多い傾向です。
F君の状況が漠然と「良くない」のは私も当然分かっています。
それがどう具体的に良くないのかという点こそ、私が知りたいと期待していることであって、このような報告は何の意味もありません。
細かい点について聞こうにも、「鵜の目」が欠けているので直接授業に関わっていない私以上にF君のことを理解していません。
これでは報告してもらう価値のある情報は一つもないことになります。
0点の報告です。

次はBパターンの説明を進めます。
「本質」を知りたいという期待が上司の中にある場合の報告方法についてです。
ケースで見た方がわかりやすいので、実例に基づいて説明させていただきます。

●状況
新規の生徒G君の数学の初回授業について、S先生からの授業報告
私→G君のことについてほとんど知らない
知りたいこと→G君の数学の実力はいかほどのものなのか?

●S先生からの報告
○ 良い例
「結論から言えば、不安な点もありますが3ヶ月もあれば成績を伸ばしていけると思います。」
「それはなぜ?」(私)
「数学で重要なのは計算力と応用力ですが、彼の場合、計算力は充分にあることがわかりました。話をよく聞いてみるとそろばんを6年やっていたそうです。そのためか授業中計算ミスは1問もありませんでした。応用力については・・・」

悪い例はもういいですね。
この場合、私が知りたいこと(結論)は「新しく入った彼の実力はどうなの?」という本質的なことなので、それを最初に報告してくれるS先生の報告は素晴らしいのです。
「本質」がそうだと結論付けるためには、いくつかの「現象」における気付きが必要です。
そうした細かい「現象」を集めて、こうだと結論付ける論理展開です。
こうした手法のことを帰納法と以前に説明させていただきましたね。

「結論から話す」とは実はこんなに奥深いのです。
本当の意味でそれが出来るようになるためには、
①相手の求めているものを察知し(「現象」を知りたいor 「本質」を知りたい)
②現在分かっていることからその答えを推測し
③その答えにいたった論理の流れを説明する
ことが求められます。
上司が鷹の視点で物事が見えている状態なのか、そうでないのかは報告の際に決定的に重要な前提条件です。
それにより、報告で求められている内容が変わってくるからです。
上司が鷹の視点を持っている場合は鵜の視点に立って細かい「現象」を、そうでない場合は鷹の視点になって全体像を見渡し、「本質」についての説明が出来る必要があります。
いずれにせよ、求められている結論が何かを予想し、結論に至る論を立てるためには全体像の理解が求められているということですね。


■習慣② 「話のポイントは3つです」
全体像を見えるようになるための習慣その2は「話のポイントは3つです。」と切り出すことです。
3つでも4つでも良いのですが、とにかく最初に分けること。
重要なのは、それがMECE(漏れなくダブりがない)に切り分けられているということです。
このように話すためには、図でいうところの横の視点が欠かせません。
それぞれについて話を続けるためには縦の論理のつながりも必要です。
「話のポイントは3つです。」の効果は絶大です。
説明が苦手な人でも、これを冒頭に付け加えることにより説明したい内容の枠組みを意識するようになります。
例えば、自動車を知らない人(アマゾンの奥地にいる原住民)に「自動車について説明してください」と言われた場合を考えてみましょう。

○例1
「自動車とは人々が移動するための乗り物です。移動するための乗り物は大きく分けて3つあります。空を飛んで移動する乗り物、海や川や湖の上を浮かんで移動するための乗り物、陸地を移動する乗り物の3つです。車というのは陸地を移動するための乗り物です。陸地を移動する方法は車だけではありません。これは・・・」
○例2
「人々は二つの理由で自動車を欲しがります。一つは移動のための手段として、もう一つは自分を格好良く見せるための飾り物としてです。」
○例3
「自動車は、大きく分けると次の○つの部品で成り立っています。一番大きな部品は・・」

続いてダメな例。

×例1
「自動車に私たちは毎日のように乗ります。それに乗って仕事に行ったりします。空を飛ぶ飛行機に比べるとスピードは遅いですが、どこにでも行けるので便利です。道路の上を走るので船のようにたくさんの物を積み込むには限界があります。」
×例2
「街には自動車を欲しがっている人がたくさんいます。それに乗ると遠いところに遊びに行ったり出来るからです。自動車の中にはものすごく高い自動車もあります。」
×例3
「自動車を運転するときに握る部品のことをハンドルといいます。ハンドルでどちらの方向に行きたいのかを操作します。スピードを出したいときはアクセルと呼ばれるペダルを踏みます。運転するときには座りながら行います。運転する人が座る席を運転席といいます。」

悪い例に共通しているのは全体像に触れず、細部の説明から入っている点。
人は見たもの聞いたものの印象が強いので、意識しなければこのような説明になってしまいます。
講師の報告例でも取り上げた通り、意識しなければ「現象」面の説明に終始してしまうんですね。
これでは何も知らない相手が「鷹の目」の視点を持つことはありません。
断片的な情報ばかりで結局要領を得ないまま説明を終えられることになるでしょう。
全体像を示しながら説明を行うための強制的な習慣こそ、
「話のポイントは3つです。」
に他なりません。
自分の見聞きした「現象」を枠組みに分類しなければ、ポイントが3つとは言えませんから。
これは簡単な習慣なので、ぜひ身につけていただきたいと思います。


■習慣③ 「例えば・・・」
そして最後の習慣。
「例えば・・・」を使うということです。
私は、説明の上手な人が最も良く使う口癖こそ、この「例えば・・・」だと思います。
教えるのが上手な先生は例外なく例え話が上手です。
そして、物事の全体像が見えている人が多いです。
なぜ例え話を使いこなすことで、物事の全体像が見えやすくなるのでしょうか?
結論から言えば、例え話を使う習慣は物事の「本質」を見抜く力を向上させるからです。
逆説的に言えば、例え話の上手い人は「本質」を見抜く力に優れた人です。
物事の「本質」を見抜く力がなければ、例え話は上手く使えません。
目の前に現れた「現象」においては全く共通点がないようなものの間に、「本質」部分における共通点を見出すことでとても楽に説明が出来るようになるのが「例え話」の利点です。
先程のケースをもとに説明させていただきます。
自動車を知らない人(アマゾンの奥地にいる原住民)に「自動車について説明してください」と言われた場合です。
例え話を使うことで、これがさらに分かりやすくなります。

例1
「例えば、皆さんは漁にいくときにこの船を使っていますね。陸の上をこの船のように自由自在に走り回るのが自動車です。」
例2
「例えば、皆さんは二つの理由でこの▲▲(派手な部族衣装)を欲しがるのではないでしょうか?一つの理由は自分を守る装備として、もう一つの理由は自分を格好良く見せるために。自動車も同じことです。」
例3
「例えば、この牛車を見てください。自動車というのはこの牛が機械になったものと言えます。」

「本質」で共通する部分を活用することで、説明がグンと楽になります。
例え話というのは、相手の頭の中にある全体像を拝借して、別の事象を説明する行為です。
それが出来るようになるためには、物事「本質」を見抜く力も必要ですが、相手の立場に立って物事を考えることの出来る視点も求められます。
実は、例え話を活用するメリットは、「本質」を見抜く力が備わる≒全体像が見えやすく なるだけではありません。
コミュニケーション能力の向上という副産物もあるのです。
相手の立場を理解しようと努めるため、観察力や想像力も養われるわけです。
ですから、「例え話」は積極的に会話の中に取り入れるようにしてください。


かなり長くなりましたが、まとめます。
「鵜の目鷹の目」を使って説明させていただきましたが、物事は「現象」を細部まで注意深く見る視点と、全体像を俯瞰的に見渡し「本質」を見極める視点の両方が大切です。
特に全体像を見ようとする「鷹の目」視点は大切です。
これが見えると物事の理解が一気に進みますからね。
何となく情報を仕入れているだけでも、この全体像が見えることはありますが、なるべく早くこの全体像が見えるように努力しましょうというのが、本日のテーマでした。
そのための習慣として私が提案させていただいたのが、以下3つの口癖です。

①「結論から言います」
②「今日のお話のポイントは3点です」
③「例えば・・」

それぞれの詳細は本文を参照してください。
どの口癖も物事の全体像をつかむ視野を身につけるためのいいトレーニングとなりますので、日頃から積極的に活用していただければと思います。


■おまけ
「自動車について教えて?」という質問への説明例を紹介させていただきます。
(※説明例ですので、内容の正否は気にしないでください)
最初に、自動車について予備知識が全くない人への説明例です。
この場合、相手が知りたいのは「本質」ですから、結論である「本質」を先に述べて、その後「現象」面から帰納法で説明を進めていくことになります。
アマゾンの奥地で原住民の王様に私が報告を差し上げるというありえない設定です(笑)。

「結論から申し上げると、人やモノを移動させるための道具でございます。例えば、あそこにある荷車が機械で動くものと考えていただければ良いと思います。私たちはそれに乗って色々な場所を訪れています。人やモノを移動するための方法は大きくわけると3つあります。空を移動する方法、海や川を移動する方法、陸地を移動する方法ですが、陸地を移動するための方法で最も一般的な手段が自動車による移動となっております。人々は二つの理由で自動車を欲しがっています。一つ目の理由は手軽な移動手段として、もう一つの理由は自分自身を格好良くみせるための手段として、です。例えるなら、この土地の住民が自分の身体を守るためと自分を格好良くみせるためという二つの理由で衣装を着ているのと同じことです。」

今度はそれなりに事情のわかっている相手への説明。
設定は私が自動車会社の社長、相手は全く違う業界の社長。
質問はアマゾンの原住民の王様と同じく「自動車について教えて?」です。
相手に「本質」が見えている場合は、演繹法を使って「現象」面から説明をします。

「結論から申し上げると、今後の自動車の中心となるのは電気自動車だと思います。自動車の動力源には大きく分けると3つあります。一つ目は言わずと知れたガソリンです。二つ目はプロパンガスでタクシーなどの燃料として使用されています。三つ目が電気です。この他にもバイオ燃料などがありますが、実用化という点で未知数なのでここでは説明を省きます。ガソリンやプロパンガスなどの天然資源を動力とするのには問題点があります。例えば、何年か前に航空業界でサーチャージ(燃油特別付加運賃)が問題になりましたが、天然資源であるガソリンを動力とする自動車にも同じ問題があります。産油国の政治情勢などによって燃料代が左右されるという問題です。電気自動車はそのようなリスクが少ないため、今後の主流になっていくものと思われます。」

同じ質問でも回答が全然違います。
結論も逆です。
このように、相手の立場や状況によって、求められている回答が異なります。
どちらを結論にすべきか考えて話すことが大切だというわけですね。


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