夏休み [教育全般]


ひさしぶりにブログを更新させていただきます。

今日は夏休みの過ごし方についてです。
塾で働いている頃、学力を貯金にたとえると、こんなことを意識して年間計画を立てていました。

1学期、2学期、3学期:貯金を減らさないようにする
春休み、夏休み、冬休み:一気に貯金する

事情のある子供や、受験生はこの限りではありませんが、部活動や習い事に忙しい生徒が、学校のある時期に飛躍的に基礎学力を伸ばすのは難しいからです。
休みの中でもっとも重要なのが、夏休みです。
なにせ期間が長いですからね。
頑張ればかなり大幅な学力アップを期待できます。

平日、子供たちが自由に使える時間は何時間くらいでしょうか?
学校や習い事、部活動、食事や寝ている時間を除けばせいぜい4時間というところでしょう。
ところが、休日は違います。
朝から晩まで基本的には自由時間なので、かなりの時間が自由に使えます。
8時間の睡眠を取るとすれば、16時間。
半日部活動があったとしても、8時間です。
夏休みの場合、約40日間なので、自由裁量時間が8時間×40日で320時間にもなります。
学期中は、土日がお休みだとして、自由に使える時間は一日当たり平均で約5時間です(※)。
※(4時間×5+8時間×2)/7=5.143・・・

ここに全く同じ学力のA君とB君がいたとします。
A君は毎日自由時間の半分を学習に充てました。
勉強時間は4時間×40日間で160時間です。
B君は2学期直前に夏休みの宿題だけをあわてて終了させました。
勉強時間は4時間×4日間で16時間の勉強です。
単純に考えると、A君は夏休みにB君の10倍勉強したわけです。
これがどのくらいの差を生むのかもう少し検証してみましょう。

実際の学力は勉強時間数とは比例しませんが、ここでは比例するものと仮定します。
B君がA君に追いつくためには、160-16=144時間の勉強が必要です。
これまでの学習時間は二人とも、1時間だったとしましょう。
B君はA君よりも勉強しなければなりません。
ところが、夏休みが終わると、自由に使える時間は一日平均5時間です。
A君も勉強する1時間分は差を生みませんから、残り4時間で差を埋めなければなりません。
シュミレーションしてみましょう。

毎日5時間勉強した場合→36日で追いつきます
毎日4時間勉強した場合→48日で追いつきます
毎日3時間勉強した場合→72日で追いつきます
毎日2時間勉強した場合→144日で追いつきます

これまで一日の勉強時間が1時間だった子供が毎日4、5時間勉強するのはほぼ不可能です。
現実的に考えれば、せいぜい一日2~3時間でしょう。
これでも、本人にしてみれば相当頑張っていると言えます。
それでも、A君に追いつくのに2ヶ月から5ヶ月ほどかかってしまいます。

さらに・・・
勉強の習慣には「慣性の法則」が働きます。
夏休みに加速したA君の勉強習慣は、ある程度の失速はするでしょうが、2学期もそれなりに勢いを残していると考えるのが妥当です。
かたやB君には、「慣性の法則」は働きませんので、二学期から勉強を始めなければならないとすれば、心理的な負担はA君よりも大きいです。
現実的には、2学期にたくさん勉強をするようになるのは、学力で遅れをとったB君ではなく、A君でしょう。
二人の差はますます埋めがたいものになってゆくのです。

実は、話はこれでも終わりません。
心理学でいうところのプラトーという現象について説明をしていないからです。
先の例では、勉強時間と学力が比例すると仮定しましたが、現実はそうではありません。
現実の学力の伸びはグラフにすると、階段状になる場合が多いです。
この水平になる部分をプラトーと言います。
(※スランプと意味合いは似ていますが、スランプは既に高いレベルにある人の成長が停滞するという意味で使われます)
学力でも何でもそうなのですが、人間の成長はきれいな右肩上がりにはならないということです。
当然、勉強したからと言ってすぐに成績が良くなるわけではありません。
(一夜漬けで結果の出る類のテストもありますが、これは基礎学力とは異なります)
これはたとえるなら、カップに注ぐお湯のようなものです。
ある段階を超えると、お湯はカップからあふれだします。
成長や変化とは、このあふれだした水のようなものです。
カップの中にどのくらいのお湯が入っているのかは周囲の人間には見えません。
ところが、水があふれると周囲の誰から見てもその変化は分かります。
先のA君とB君のお話に戻ると、夏休みを終えてすぐB君がA君の成長に気づくとは限らないということです。A君の変化にB君がいつ気づくかはわかりませんが、それに気づいたときにはもうすでにかなりの差がついていることでしょう。
あわてて水を注ぐB君のカップから水があふれだすのは、当分先のお話です。

二人の夏休みの勉強時間が長期的に大きな差になっているという現象を、累積勉強時間、勉強の習慣における「慣性の法則」、プラトーという3つの観点からお話させていただきました。
僕がここで言いたいのはB君になるなということではありません。
ここで強調したかったのは、たった1ヶ月で、誰にでもA君になれるチャンスがあるということです。
カップからお湯があふれるとき、つまり誰の目から見てもわかる変化が本人に訪れるとき・・
まさに本人の生きている世界が変わります。
大げさではなく、夏休みをきっかけに劇的な変化を遂げる子供を何回も目にしてきました。
こんなチャンスは一年に一回しかないのです。

夏休みはまだまだこれからです。暑さに負けず頑張りましょう。

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