傾聴のスキル(レベル4)実践編 [コミュニケーション]

6月21日   

今日は実際に傾聴のスキルを使って、子供の悩み相談に取り組んでみたいと思います。
親と子供の心の動きに注目してください。

■あなたには中学3年生のお子様がいます。夏休み前に突然高校進学しないと言い出しました。

☆子供
「僕は高校に進学しないで働くことにした」
(またどうせ何か文句言われるんだろうな・・。でも絶対高校なんて行くものか!)
★親 
「あと半年で学校生活を終えて、社会に出る・・相当思い悩んでいるのかい?」
(これは学校で何かあったな。相当イライラしているぞ。まずは話を聞こう)
☆子供
「勉強なんて意味がないと思うんだ」
(そっか、あと半年もすれば働かないといけないのか・・それは嫌かも)
★親 
「勉強には意味がない・・何かつらいのかい?」
(そう言えば、模試結果が返却される頃だな。それが悪かったのかもしれないな)
☆子供 
「実は、今日一ヶ月前の模試結果が返ってきてさ。僕に行ける高校はないって
塾の先生が言うんだ。もし行きたいんだったら、夏休みは毎日6時間は勉強しろって。今まで勉強したこともないのにそんなに出来る気がしないよ。」
(今日は本音で話しても大丈夫そうだな)
★親
「そんなに勉強出来る気がしないってわけだ」
(なるほど悩みは分かったぞ。高校に行きたくないわけではなさそうだ)
★親
「でも、実際はそこまで勉強しなくても入れる高校もあるんじゃないかな?」
☆子供 
「僕が行きたいのはそんなに簡単な高校じゃないんだ!バカな生徒と一緒に勉強
するくらいなら働いた方がましだよ!」
(お父さんは何としても高校に行かせるつもりだな!)
★親
「高い目標を持っているからこそ、今の成績が不安だったんだね」
(いけない、いけない。感情的になってきた。もう一度よく話を聞こう)
☆子供
「そうなんだ・・。僕の行きたい高校に行くためにはあと100点必要なんだって」
★親
 「今回は何点取れたの?」
☆子供
「五教科で300点。全然ダメだったよ」
★親 
「なんだ全然悪い成績じゃないじゃないか!」
(確かに前回よりも大幅に下がったな。でも思ったよりひどくもない)
☆子供
「悪いよ!だって山田君は420点も取ったんだよ!」
★親 
「お前より120点も良かったんだ。それは悔しいね」
(また感情的になってるな。今はまだ話を聞く場面だ)
☆子供
「そうなんだ。前のテスト結果は一緒だったんだよ。勉強だって同じくらいしかしていな
いはずなのに、納得がいかないんだ。僕は頭が悪いのかなぁ・・」
(そうか・・僕は山田君に負けたことが悔しかったのかもしれない)
★親 
「テストが取れなかったから頭が悪い。だから落ち込んでしまった。高校に行きたくない
 というよりは、高校に行ける自信を失くしてしまったのかな?」
(何に悩んでいるのかが見えてきたぞ。要するに次のテストで山田君に負けないくらいの点数を取りたいが、そのための勉強に自信がないんだな・・)
☆子供
「そうかもしれない・・。頑張ってやっても点数が上がる保証もないし」

・・・・・

きりがないのでここまでにします。
どうでしょうか?
ポイントを整理して説明しますね。
キーワードは子供の「感情」です。相手が感情的に発言をしているときに論理的な説明をしても相手は決してこちらの言葉を受け止めることは出来ません。

例えば、「悪いよ!だって山田君は420点も取ったんだよ!」という場面。
論理的な返答例とその返答に対する子供の心の中を見てみましょう。

親「山田君はきっと見えないところで努力をしていたんじゃないかな?」
子供(それは僕が努力をしていないってこと?こんなに頑張っているのに)
親「成績には波があるから、今回はたまたま山田君の成績が良かったんじゃないかな?」
子供(僕は、山田君は本当に頑張っていたから点数が取れたんだと思う)
親「受験まで時間はある。120点の差なんてすぐに埋まるよ」
子供(お父さんは勉強がどれだけ大変か分かっているのかな?)

要するに何を言っても無駄なのです。
この段階では話を聞くこと以外に正解はありません。
まずは傾聴のスキルを使って、子供を落ち着かせなければなりません。
徹底的に話を聞くと、子供の感情に変化が訪れます。
今度は、親の論理的なアドバイスを聞きたくなるのです。
どうすれば夏休みに成績を上げることが出来るのか?
他にはどんな進学先があるのか?
お父さんやお母さんは受験のときにどんな苦労をしたのか?
そうしたお話に耳を傾けてくれるのです。
そのお話をしている段階で感情的な反応が返ってきたら、もちろん傾聴に戻らなければなりません。
相手の様子を見ながらこちらの対応を変えるのです。

以前、僕は書きました。
どんな育て方をしても愛情があれば、長期的にあなたと子供の関係は必ず改善されると。
しかし、愛情だけで子供が自立できる保証はありません。
そこにはやはり「育て方」のテクニックがあるのです。
この例で論理的な反応ばかりをこの親が示したと仮定します。
そのとき、子供には高校進学するだけの学力があり、本人も心の底ではそれを望んでいるにも関わらず、高校に行かないという選択を子供がしてしまう可能性が生まれます。
自分の立場を正当化するために、あえて間違った選択肢を選んでしまうんですね。
特に強い自分の意志を持っていて、将来が楽しみな子供にこの傾向が強いです。
これが教育の恐ろしさなんです。
高校進学がすべてではないですし、それ以外の選択肢でももちろん良いのですが、今回の子供の例で言えば、彼が高校進学しないのは正しい選択とは思えません。なぜなら彼自身の本音は高校に行きたいからです。
それを察して上手く導いてあげるのが親の大切な役割でしょう。

このコミュニケーションスキルはもともと大人のためのものです。
ビジネスでも充分に使える内容ですので、ぜひ仕事でも活かしてください。
それではまた。
こうしたテクニックも随時公表していきます。


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