聞く力 [コミュニケーション]

6月20日

さて、昨日の質問に対しての回答をしたいと思います。
あえて最善の答えを述べるなら、
「あと半年で学校生活を終えて、社会に出る・・相当思い悩んでいるのかい?」
となります。
これって、Bの答えに似ていますよね?
「その理由を話してごらん?」と一体何が違うのでしょうか?
実は、どこに話の焦点を当てているのかが違います。
Bの回答はあくまでも「なぜ高校に進学をしないのか?」についての質問です。
しかし、先の回答はそうではありません。
子供の感情面に対しての質問になっているのが重要なポイントなのです。
高校に行きたいかどうかではなく、子供が今、何を感じているのかを理解しようとするための質問なのですね。

それでは、なぜこのような返答が最適なのかを見ていきます。
人間関係の原則として、
「自分を理解していない人間を理解しようとはしない」
と言えます。
これは親子のような間柄においても例外ではありません。
いえ、むしろ親子だからこそ、より顕著にこの傾向が現れると言えます。
子供が突拍子もないことを言い出すのには理由があります。
まずあなたに求められるべきことは彼や彼女の立場に、自分自身を置き換えて徹底的に理解するように努めることです。特に理解すべきは相手の論理ではなくて、感情です。
このようなことを突然言い出した場合、子供の感情は何かしら波立っています。
感情的になっている相手に、論理でいくら対抗しても火に油を注ぐようなものです。
子供からは自分の考えを正当化するための言葉しか引き出せません。
まずは感情的になっている相手を冷静にしなければなりません。
そこから論理的な話が始まるのです。
しかし、相手の感情を落ち着かせるのは簡単ではありません。
相手の感情を理解するための、話の聞き方として傾聴のスキルを説明します。
あくまでもスキルなので、これが全てだと思わないでください。
傾聴のスキルには4段階あります。
まずレベル1。これが最も簡単です。
それは「相手の言うことを繰り返す」です。
「高校に行きたくないと思っているんだね」
これでOK。
こうした話の聞き方が出来ていなかった方は、このように聞いてあげるだけでもお子様の反応は劇的に改善します。少し子供の心の中をのぞいてみましょう。

子供 「僕は高校に進学しないで働くことにした」
(またどうせ何か文句言われるんだろうな・・。でも絶対高校なんて行くものか!)
母  「高校に行きたくないと思っているんだね」
(えっ!?何で何も言わないの?)
子供 「そうなんだ・・勉強なんて意味がないって思ってさ」
(しっかりやった方がいいかもしれないけど、僕には僕なりの生き方がある!)
母  「勉強には意味がない・・」
(え、えっ!?それを認めてくれるの?じゃ、僕の本音を話してみようかな?)
子供 「実はさぁ・・昨日実力テストが返却されたんだけど、・・」

実際、ここまで簡単にいくかはわかりませんが、まぁこんなものです。
暖簾に腕押しのようなもので、イライラの矛先を見失ってしまうんですね。
これが傾聴の威力です。
相手が感情的な問いかけをしてきたときはまずそれを落ち着かせなければなりません。
そのためには相手の話を徹底的に聞く姿勢が求められるのです。

それでは次に傾聴のスキル、レベル2を説明します。
次の段階は「相手の言葉を自分の言葉に置き換える」です。
これだけでかなり聞き方が洗練されます。
上の例で示せば、こんな具合です。
「中学校で学生は止めて、もう社会に出たいんだね?」
「勉強は将来の役には立たない・・・」
このように相手の言葉を自分の言葉に置き換えて発信するのです。
彼の言葉を感情的に理解している上に、新しい気付きを与えることが出来ます。
オウム返しのように反応するよりも真摯な姿勢も伝わりやすいです。

レベル3になると、少し難しくなります。
この段階では、「相手の言葉の感情を反映」するのです。
つまり、
「相当思い悩んでいるんだね」
「珍しく落ち着きをなくしているみたいだね」
相手の言葉から心情を察して、その心情を反映します。
これは傾聴のスキルでも高等技術です。
なぜならあなた自身が子供の発言の中に含まれている感情的な側面を理解しなければならないからです。
もちろんこの発言に対して、あなたが感情的にならない冷静さも求められます。
あなたが感情的に心情を反映する言葉を投げかけるとしたらどうでしょうか?
「何をイライラしてるのっ!!?」
・・・最悪です。
あくまでもあなた自身が子供の発言に対して冷静でなければこのスキルは使えません。

そして最終段階。傾聴のレベル4です。
これは、「内容を自分の言葉で言い換えて、感情も反映する」です。
すなわち、本日のブログの冒頭で出した例です。
「あと半年で学校生活を終えて、社会に出る・・相当思い悩んでいるのかい?」

なぜこの返答が最適なのか?
明日はこのスキルを使った場合の、子供の心の変化を追ってみたいと思います。



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