風が吹けば桶屋が儲かる? [論理的思考能力]


こんにちは。
あの悲惨な地震から2週間以上が経ちました。
相も変わらず伝わってくる悲しいニュースに心を痛めることもしばしばですが、いいニュースも同じくらいたくさん入ってきます。
いいニュースとして、今日は近隣諸国からの義援金についての記事を紹介させていただきます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110326-00000046-mai-cn

特にすさまじいのは台湾です。
台湾人は親日的だとはよく言われますが、それを裏付けるような記事ですね。
ただ、人によっては、「日本よりも貧しいのに・・」みたいな風に思う人もいるみたいですが、それは大きな間違いです。

http://www.taiwanembassy.org/JP/OSA/ct.asp?xItem=164416&ctNode=5548&mp=247

各国の豊かさを表す指標として、「一人当たりGDP(PPPベース)※」というものを用いられることが多いのですが、台湾はすでに日本を上回っています。
(※簡単な説明を最後にのせておきました)
比較方法によっては、日本よりも豊かな国なんです。
それなら、64億円くらいたいしたことないじゃんという声が上がるかもしれませんが、これもまた間違っています。
台湾は日本よりも人口が少ないからです。
しかも、物価が安いので、64億円の価値は日本よりも高いのです。
例によって、大きな数字というのは比較しなければ意味がわかりませんので、比較してみます。
義援金について云々するというのは少々不謹慎ですが、どのくらいありがたいことかをわかりやすく説明するために行うだけですので、お許し下さい。
台湾の2010年の名目GDPはおそらく13兆8246億台湾ドルくらいです。
(※データが見つからなかったので、自分で算出しました。間違っていたらスミマセン)
それに対して義援金である23億台湾ドルが全体に占める割合は、およそ0.017%。
同様の割合を日本に当てはめて考えてみます。
2010年の名目GDPは480兆円程度となるでしょうから、これに0.017%をかけると、約800億円。
直近でアジアに起きた大災害で考えると、四川大地震が思い起こされますが、四川大地震の場合は中国国内と海外からの総額で900億円くらいの義援金が集まったそうです。
近隣諸国で未曾有の大地震が起きたと聞いても、日本国内で800億円の義援金が集まるかどうかは甚だ疑問です。
四川大地震で集まった総額を見れば、それがいかに難しいことかはよく分かります。
でも、それくらいのことをやってくれたのが、今回の台湾なんですね。
あらためて感謝、謝謝、多謝です。
万が一、台湾が似たような不幸に巻き込まれるようなことがあれば、800億円を集めましょう。
一人700円の寄付で840億円です。
もちろん、こんな不幸はもう二度と起こらないことが一番です。

では、本日の内容に入ります。
前回に引き続き「論理的に考える」とは、どういうことかを説明していきます。
「演繹法」は上から下に思考を進めていきます。
「演繹法」を用いる上で重要なのは、「本質」を切り分ける際にMECEで分けていくという点です。
何年か前のロジカルシンキングブームによって市民権を得た言葉の一つです。
私もそれまでこの言葉自体は知りませんでした。
MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、「モレなくダブりなく」を意味しています。
言葉だけではわかりにくいので、例をあげて説明しましょう。
以下の単語をMECEに切り分けてみます。

例)「人」を例に、因数分解してみると・・・
○ MECEになる例:男性と女性、大人と子供、外国人と日本人、上半身と下半身、など
× MECEにならない例:社会人と学生(※1)、欧米人と日本人(※2)、上半身と身体(※3)
※1 乳幼児などが含まれていませんし、社会人の学生もいます(モレもダブりもある)
※2 韓国人などが含まれていません(モレがある)
※3 胸や腰は、上半身とも言え、身体の一部とも言えます(ダブりがある)

要は、足して100%になるようにするということです。
ただ、最下層(下の図ではDEFG)は、個々の「現象」を表しますので、MECEは現実的に不可能です。
経験上、MECEに分けるのは、せいぜい上から3層目くらいまでで、4層目5層目以下をMECEに分けていくことにはあまり意味がないです。
もう一つ。
MECEはあくまでも理想であって、100%にこだわりすぎる必要もありません。
例えば、「男性と女性なら、ニューハーフはどうするんだ?」とかそういう議論にはあまり意味がないという事です。
そもそも、抽象的な問題を切り分ける場合、完全なMECEは難しいのです。
学校の例に戻ると、Z先生は「しつけの不徹底」がもたらす問題を「人格面」と「行動面(だらしなさ)」という二つの問題に切り分けて考えました。

図4.jpg

これはMECEになっていて、モレもダブりもありません。
そしてその観点からY中学校を調べると、DEFGのような問題が発覚したわけです。
繰り返しになりますが、このような方法を「演繹法」と言います。
もう一度図を見てください。

図1.jpg

AからDの方向に向けた思考を「演繹法」。
DからAの方向に向けた思考が前回に取り上げた「帰納法」です。
第二階層であるBとCは足したら100%になります。
学校の例では、DEFGを足しても100%にはなっていませんが、「現象」を100%にすることはほぼ不可能に近いので、それで問題ありません。
(※上の図は概念図なので、第三階層もMECEが実現されています)

上のような論理構成のことを「ピラミッドストラクチャー」と言います。
科学的に解明されるすべての事象に、この論理構成を当てはめることが出来ます。
結論から言えば、この全体像がぱっと見える人が論理的思考のできる人です。

さらに、もう少し補足させてください。
オレンジ色で辿る思考の流れは因果関係を示しています。
因果関係で最も有名な例は、「風が吹けば桶屋が儲かる」でしょう。
この因果関係は以下のように説明されています
(※ウィキペディアより抜粋)

大風で土ぼこりが立つ

土ぼこりが目に入って、盲人が増える

盲人は三味線を買う(当時の盲人が就ける職に由来)

三味線に使う猫皮が必要になり、ネコが殺される

ネコが減ればネズミが増える

ネズミは桶を囓る

桶の需要が増え、桶屋が儲かる

このような思考の流れを経て、「風が吹く」→「桶屋が儲かる」という論理を成り立たせているのです。
この論理の流れを上手くつなげば、一般的にはつながりがないとされるものの中に因果関係を見つけることが出来ます。
例えば、過去のブログでも取り上げましたが、ニューヨークのジュリアーニ市長は「不寛容政策」と呼ばれる政策を用いて、ニューヨークの犯罪率を劇的に低下させました。
この中には、「花火を取り締まる」といった細かいことまで含まれていたのですが、「花火を取り締まる」ことと「犯罪率の低下」との間には因果関係はないように思えます。
それが、きちんとした論理でつながっていれば、「花火を取り締まる」という一見関係のない施策によって犯罪率を低下させることが出来るんですね。
ただ、この論理がきちんとつながるかどうかは検証が必要です。
例えば、「風が吹けば桶屋が儲かる」の理論は、風が吹いて、土ぼこりが舞うと、視覚障害者が増えるという論理の流れですが、土ぼこりが舞うから視覚障害者が増えるという論理にはかなり無理がありますね。
どうせなら、

風が吹く

寒くなる

お風呂屋さんの客が増える

桶が足りなくなる

この論理の流れの方がまだ説得力がありそうです。
この論理の流れに説得力を持たせるために必要なのが、数字による証明です。
例えば、

この地域に北風が吹くと、冬型の気圧配置になったことが確認されており、こうなると今後4ヶ月間は平均気温が5度未満の日が続く(統計上95%の確率でそうなる)

(風が吹く前に比べて)平均気温が10度以上下がっている

平均気温が5度下がる毎に、銭湯の客が20%増加することがわかっている
(冬期は平均気温が10度以上下がるので、40%以上の増加が見込まれる)

客が20%以上増えると、銭湯の桶が足りなくなることが知られている

かなり無理矢理ですが(笑)、このようにして論理をつないでいくわけですね。
上の数値などが実験や統計によって事実だと証明されていれば、「風が吹けば桶屋が儲かる」という論理が成り立つことになります。
少し長くなりましたが、以上が「因果関係」の説明です。

まとめます。
前回は「帰納法」、今回は「演繹法」について説明させていただきました。
「現象」から「本質」を導き出すためにも、「本質」から「現象」を導き出すためにも、「因果関係」を明らかにする過程は外せません。
「因果関係」が「風が吹けば桶屋が儲かる」のようになっていないことが大切で、そのためには数字による証明が一番確実であると説明させていただきました。

次回は、実際の問題解決の場面において、それぞれがどのように使われるかを見ていきます。

※「PPPベースの一人当たりGDP」とは?
コーラしか売っていない2国があるとして、A国はコーラを100円で買えるとします。
B国は50円で買えるとします。
それぞれの国には10人の労働者がいるとします。
それぞれの国の10人の労働者の一年間のお給料はそれぞれ1000円で同じです。
この1000円を「一人当たりGDP」。
全員の給料の合計額10000円を「GDP(国内総生産)」と言います。
A国ではコーラを一人10本買えます。
B国ではコーラを一人20本買えます。
お給料は同じですが、豊かさはB国の方が2倍です。
2国の「一人当たりGDP」は1000円で同じですが、B国の「PPPベースの一人当たりGDP」はA国の2倍となります。


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