中学や高校を名前で選んではいけない理由 [学校の選び方]



前回、高校の大学進学実績を4段階まで分けました。
再度確認します。

【大学合格実績による高校のグループ分け】

S:東大、京大合格者が20~30人に一人程度、国公立大学合格者が25%以上
A:東大、京大合格者が150人に一人程度、国公立大学に一定数
B:国公立大学に数人、有名私立大学に10%以上
C:国公立大学、有名私立大学への合格者が数人

もちろんSランクが優秀校ですが、地域の名門校とは限りません。
学校再建に熱心な私立高校の進学コースなどで、入学難易度が低いにも関わらず、合格実績はSランクという高校がたまに存在します。
日本の大学進学率は50%を超えています。
中学3年生の段階で子供が「大学に行くかどうかは分からないけど、就きたい仕事は未定」という意見だとすれば、大学進学という進路になる可能性はかなり高いです。
大学進学を希望していた子供が、高校3年生になってから専門学校や就職に進路変更するのは難しくないですが、その逆は難しくなります。
「大学は必ず進学する予定」に加えて、「卒業後の進路は未定」という子供に関しても、大学進学を前提とした高校選びが原則になると考えてください。
あまり言いたくないことでしたが、繰り返し指摘してきたのが、大学選びの重要性です。
国公立大学か有名私立大学に行くというのが、基本戦略となります。
ここまでのお話で、すでに高校選びの選択肢が限定されるケースがあります。
地方出身で、高校卒業後に一人暮らしが許されない子供です。
この子供は国公立大学を目指さなければなりません。
必然的に志望校は合格実績がSかAグループの高校となります。
たとえ、私立高校だったとしても、そうした学校に進学することをおススメします。
東京、大阪、京都の近郊に住んでいれば、そこにこだわる必要はありません。
本人の卒業後の一人暮らしが可能な場合も同様です。

さて、大原則ですが、高校選びの基準は以下の3つです。

①立地(通える範囲には限界があります)
②入試レベル
③自分の希望(将来の志向との適合性や部活動の有無)

おそらくほとんどの方は①→③の順に考えることになると思います。
①で選べる範囲には限界がありますが、②は成績次第です。
言うまでもありませんが、成績が良いほど選べる学校数は多いです。
ここまでで検討するべき高校をいくつかに絞ります。
そして、最後の③の段階に入ります。
部活動や子供の専門的な技能(体育、美術、商業など)についての希望がある場合は志望校は固定されますが、そうでない場合は大学合格実績をもとに考えていきます。
前回述べたように、入試難易度の高い高校が、大学合格実績が優秀とは限りません。
実際はこのように分布します。

【高校入試難易度と大学合格実績の関係】

入試難易度レベル4(偏差値70~60):大学合格実績 S、A、「B」
入試難易度レベル3(偏差値60~50):大学合格実績 (S)、A、B、「C」
入試難易度レベル2(偏差値50~40):大学合格実績 (A)、B、「C」
入試難易度レベル1(偏差値40~30):大学合格実績 (B)、C

ここで( )で示した学校は、進学するメリットが大きい学校で、ほとんどが特色ある私立高校です。
一生懸命探さないと見つけられません。
学校が進学に向けて熱心に取り組んでいる様子が伺えます。
逆に「 」の高校は進学するデメリット面が強く、公立の伝統校に多いパターンです。

組織における「20:60:20の法則」というのがあります。
人間が集団になると、上位層20%、中間層60%、下位層20%に分かれてしまうという法則です。
理論の成否はともかくとして、ほとんどの高校ではこの傾向が見られます。
つまり、ギリギリの成績で高校に入学すると、下位20%に含まれてしまう可能性が高いのです。
ここでもう一度最初の分類を見て欲しいのですが、Sグループでも国公立大学に行ける割合は25%程度に過ぎません。Sグループの高校に入学しても、下位のグループに属してしまえば、国公立大学に進学出来る可能性はかなり低くなるのです。
それを考えると、高校のランクはあえて下げた方が得になる場合も多いです。
例えば、偏差値62の生徒が、入試レベル3で合格実績Sクラスの高校に進学するのはかなり有利です。
わざと入試レベルを下げることで、上位20%に入る可能性がさらに高くなります。
逆に、偏差値45の生徒がレベル2の中からAクラスの合格実績を持つ高校を探して、高校入学と同時に大学合格に向けて猛勉強をしかけるというのも一つの作戦でしょう。
地域の高校の大学合格実績を、穴が開くほど見つめるとそういうことが少しずつ分かってきます。
高校の入試難易度と大学合格実績には微妙なズレがあるので、それを有効に活用すると中学卒業時点で偏差値50くらいの生徒が、東大に合格するといったようなことが現実に起こります。
典型的な学校選び失敗例は、中学卒業時に偏差値61くらいだった生徒が入試レベル4、合格実績Aランクくらいの高校に進学して、「20:60:20」の法則に従って、下位20%に入ってしまい、中堅私立大学の合格すら出来ないという状況になってしまうことです。
もったいない話ですが、現実にこういう例は多いです。
中学や高校をブランド名で選ぶと、こうした失敗に陥ります。
中学、高校はブランド名で選んではいけません。

表に書くと簡単ですが、言葉のみで説明したので、かなり難しい話になってしまいました・・(反省)。
高校選びも奥が深いということです。
まだ説明が不十分かと思われますので、次回も学校選びのお話を続けさせていただきます。

※大学でも「20:60:20の法則」が働くから、ブランド大学に入学するべきではないのではないか?という指摘もあるかもしれませんが、それは違います。
最も大きな理由として、高校の勉強は中学の勉強の延長線上にありますが、大学の勉強はそうではないという点が挙げられます。極端な話、受験に合格さえしてしまえば、まじめに通えば、どこの大学でもきちんと卒業出来ます。
もう一点。大学合格実績が優良高校を見極める手段にはならないという指摘があるかもしれませんが、それも違います。在校生の実力が定量化(具体的な数字)して表される唯一の指標だからです。在校生の模試の点数の平均点などを公開している高校もありますが、全ての学校ではないので、相対的に比較することが出来ません。
現時点で、大学合格実績は客観的に高校の実力を示せる唯一の指標なのです。
普通科の高校であれば、合格実績には当然こだわるべきです。


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